【D病棟師長インタビュー】認知症ケアの最前線!「人間らしさ」を尊重する看護のやりがい

D病棟は認知症治療病棟であり、通称「ふれあい病棟」として親しまれています。今回はD病棟の師長に、その特別な役割や看護のやりがいについてお話を伺いました。

Q. D病棟の最も大きな特徴はどのような点でしょうか?

D病棟師長:当病棟は精神科の病棟であり、鍵がかかる病棟です。その上で最も強調したいのは、当院の「身体拘束廃止」に基づき、身体拘束を極力排したケアを徹底している点です。身体拘束へのチェックは非常に厳しく、安易に抑制することはできません。D病棟では可能な限り、点滴中も常に看護師が見守り、車椅子に乗っていただいて見守ったり、ベッド上で見守ったりと、患者さんの尊厳を守るケアを実践しています。

実際、当院の倉庫には昔使っていた拘束具がありますが、今はほとんど使用していません。せん妄状態で胃管、尿管カテーテルを抜いてしまうなどの特殊なケースでは一時的に抑制を行うことはありますが、それは患者さんの安全を確保するための、ごく稀な例外です。私たちは、患者さんの自由と尊厳を何よりも重んじています。

Q. そうした患者さんに対し、D病棟ではどのようにアプローチしているのでしょうか?

D病棟師長:お薬の調整には非常に慎重です。高齢の患者さんが多いため、医師と連携して薬の影響で寝たきりになってしまわないよう、細かく調整します。

加えて、D病棟の大きな強みは、非薬物療法に非常に力を入れている点です。歌や音楽活動、運動などを通じて、患者さんが活動的に過ごせるよう働きかけています。特に、D病棟には常駐のリハビリスタッフが3名いることが大きな特徴です。54床の病棟に3名のリハビリスタッフがいるのは、非常に手厚い体制だと自負しています。様々な活動を通じて、患者さんが「その人らしさ」を取り戻し、穏やかに過ごせる環境を提供しています。

また、認知症の周辺症状の陰に隠れている内科的な疾患を見逃さないことも重要です。例えば、糖尿病のコントロールが不十分だったり、脱水や便秘が原因で不穏状態になっている方もいらっしゃいます。高齢者施設等では気づかれにくいこれらの問題も、当病棟では多職種で連携し、丁寧に観察することで早期に発見し、適切な治療に繋げています。

Q. D病棟での看護師の具体的な役割や、やりがいについて教えてください。

D病棟師長:D病棟は常に賑やかで、患者さんとの声かけや会話が非常に重要になります。患者さん自身が症状を正確に訴えることが難しいからこそ、看護師には卓越した観察力と、患者さんに寄り添う真心ある言葉かけが求められます。患者さんの生活の様子や言動から、隠れた不調やニーズを察することが最も大切です。例えば、そわそわしている様子を見て「トイレに行きたいのかな?」と察したり、便秘が原因で不穏になっていることを見抜いたりといった具合です。

患者さんが落ち着きを取り戻し、笑顔を見せてくれる瞬間に、看護師としてこの上ない喜びを感じます。業務効率を優先するのではなく、患者さんの本来の姿と尊厳を優先するという学びも多いです。

Q. 最後に、求職者の皆様へメッセージをお願いします。

D病棟師長:D病棟での看護は、まさに「人間らしさ」を追求する仕事です。医療が進歩しても、結局は「真心」や「言葉かけ」といった人間としての触れ合いが、患者さんの心を癒し、穏やかさを取り戻す原動力となります。認知症の患者さんから「ありがとう」という言葉が返ってくることは少ないかもしれませんが、穏やかで生き生きとした表情を見せてくれることが、私たちにとって何よりの喜びです。

患者さんの尊厳を第一に考え、寄り添う看護を実践したいという方にとって、かけがえのないやりがいと成長が得られる場所です。ぜひD病棟の「らしさ」を感じに来てください。

【インタビュー後記】
今回、厚木佐藤病院D病棟の師長にお話を伺い、認知症ケアの最前線にある「ふれあい病棟」の温かさと専門性を強く感じました。特に「身体拘束ゼロ」という理念のもと、患者さんの尊厳を何よりも大切にする姿勢に感銘を受けました。
看護師が患者さんのわずかな変化を察知し、多職種と連携しながら「人間らしさ」を尊重したケアを実践していることが伝わってきました。
精神科や認知症ケアが未経験でも、患者さんに寄り添う看護を実践したい方に、D病棟は最適な場所だと感じました。

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